No.2(夏のなごり)

私の通った小学校は田舎町の城跡に建ていた。木造の古いものであり、天守閣跡に立つと遠くに神社の椎木の森が見える。その深い緑が切れるあたりから瑠璃色をした瀬戸内の海が見えるそんな環境のところだった。

私が小学5年生の頃だったと思う。友だち2人とランドセルを背負い校門から続く坂道を下り通り道にでる。100メートルほど歩くと3人で田んぼの中の小さなあぜ道に曲る。その昔は城の回りを囲んでいたらしい堀跡の小さな川ぷちに出る。川ずたいにあぜ道を進み3人だけの秘密の場所にとたどりく。
まずランドセルをあぜ道に投だし裸足になって稲刈り跡の水涸れの田んぼに入っていく。
一歩踏み出すと冷たさが足から全身に伝わり鳥肌が立った。
それから3人3様で両手を一気に泥の中に両手を差し込み田の泥をすくいあげる。泥は、丁度発酵させたパン生地のような固さである。泥生地を伸ばすように地面になすり付けると中からドジョウが顔を出す。それを拾ってブリキのバケツにほうりこむ。
「あれ、」学校帰りなのに誰がバケツを持って来たのか?・・・・・
不思議に思ったがドジョウ取りに夢中で深く詮索する気もなかった。母親に叱られない様に一応は気を付けてはいるのだがズボンの裾、シャツの袖口は泥だらけだ。

日課の様なドジョウ取りを満喫し終わると、不思議なバケツをさげあぜ道を3人で帰って行く。
何を話したかは忘れてしまった。明日の真ぶな釣りのことだったかも知れない・・・・・・・

友だちと別れ私は、城跡から見える神社の隣の祖母の家へ行く。裏口から入り、吹き抜けの土間にある大きな石臼の所にゆき、上にかけてある板をソ−ッと横にずらすと金魚藻の中に小さなマブナが数匹泳いでいる。先週の日曜日に安国寺の池で釣ったものだ。
「よし、よし・・・・・」
なんとゆう理由はないのだが魚を見るだけで満足してしまう。
三分の一ほどずらした板の隙間からバケツのドジョウを石臼の中に流し入れる。真ぶなは一瞬にして砂荒らし状態になった水中で右往左往する。金魚藻も丸まってしまい大きな草餅のようだ。
そのまま覗いていると水は徐々に透明度がもどってくる。
あれ、ドジョウの姿が見えない。「おかしい。」
水面に頬ずりをするようにして透かして見るが、1匹もいない。
両手で金魚藻をすくいあげ確かめるが真ぶなだけで、やはりドジョウはいない。石臼の周りもはねているはずもなく。
何処へ・・・・・・・・・・

川の流れの音で目をさました。
「あぁー、夢か・・・」それで、なぜブリキのバケツが出て来たりどじょうが消えのか謎が解けた。夢か・・・

テントのジッパーを下げ外に出る。椅子に腰掛け半分は寝たままの状態でなにに使うというのではなく習慣でお湯を沸かす。
川面には霧がかかり餌釣りをする人が3人霞んで見える。その様子を観ながら水場に行き顔を洗う。

テーブルもどるとすでに湯が沸いている。とりあえずコーヒーを入れることに。

霧は少しずつ消えて行きだした。

朝食はトマトソースを作ろう。
こんなに早くできる料理は他にあるだろうか?
今日は、6分ほどで仕上げた。パンでトマトソースをすくって口に入れる。インスタントのコンソメスープも山の水で作ると一味ちがってくる。

朝食の間に釣り人が何人か登って行ったので予定を変更し、栃木の大芦川に行く事にする。テントをかたずけていると尾瀬の方から冷えた風が吹き下りてくる。少し汗をかいた体には気持ちがいい。

午前10時過ぎに、五十湖から日光、鹿沼とぬける予定で檜枝岐を出る。途中、鱒川まで来るとをちょっと覗いて観たくなった。道をそれ川の左側を上流に向かって林道を上がってゆく、ルアー釣り青年がいるが釣れているようには見えなかった。少し話したかったがすぐに上流に消えてしまった。やむなく車をUターンさせ352号へもどる。ついでに小鹿川にもひっかかって行こうか。
10年ほど前に友人4人で行ったたことがある。その内のひとりK氏が堰堤の下流でいいヤマメをかけ損ねたことを思い出しそこへ行って見ることにした。
記憶をたどりながらであったが30分ほどで着くことが出来た。
車を止め、川へおりて行くと川はうす緑色のトンネルになっている。
その中を風が通り抜け葉が触れあいサラサラと音をたてる。水の透明度は高い。
不用意に川岸に立つと小さなヤマメが上流へと走った。

私は以前この少し下流で形のいいイワナをかけたことを思い出す。対岸に大きな木が横たわり川底にはこぶし大の石が敷きつめられ、いかにも隠れ家には良さそうだった。記憶に残る釣りは、いくら時が流れてもスケッチしてあったように思い出せるようだ。その思いでの場所に下ろうかと思ったが、足は反対に上流にゆっくり踏み出されていた。あたりを見渡すとあの日と同じように 水際の荒く白い砂に「竜のヒゲ」(沿階草)が生えている。

「あれだ。」あの時、K氏がヤマメを2度かけ損ねたポイントが目に入ってくる。左右から木の枝が張り出し薄暗くその下に2つの大石が流れを止めるように居座、石と石の間をすり抜けるようにして流れが深場にさし込む。前よりいくぶん浅くなったようだがヤマメが住むには十分の水深はある。奥には日にさらされた堰堤も見える。
記憶はゆっくりと、完全にもどっていった。

私は、竿を取りに車にもどる。心の中を軽い緊張感が走る。
「あのワンポイントだけやろう。」
もし、あそこで出なければそれであきらめて大芦川に向かおう。

再び川にもどり毛バリを結びなおしリールから目測でラインを引き出す。真下からのキャスティングになる。
1度目はポイントの下流にキャストする・・・・・・・・
次はもう少し上に・・・・・・・
そうしてポイントの少し上に。

「出た!」いいヤマメだ。

「あああっ、・・・はずれた」

がっかりしながらラインを手繰り寄せてみるとバレた訳ではなく。チペットとリーダーの結び目が切れていた。何ともはや一番くやしく、悲しい結末になってしまった。
「・・・・・・・・・・・・」

ラインをリールに巻取り竿を二ッにたたみ下流の車にもどる。エンジンをかけ走り出すが一人の沈黙が続き325号線に出るころにため息を一つ。

この近くに時々立ち寄るワサビ屋がある。気分転換に寄ってみよう。店の老夫婦と地元の人が茶のみ話しをしているとこだった。
「こんにちは、ワサビの葉ありますか?]
「終わりですか?」
いつもは、店先の大きな木槽にいっぱい入れてあるのだが、今日は、水もワサビも入っていないので聞いてみた。
「あるよ。裏にいくらでもあるよ。」
おやじさんの方が裏に行きながら答えた。

おばさんの方はお茶を入れ小皿に切ったワサビを出してくれた。添えられてあった爪楊枝でワサビを口に運ぶと天然の辛みが広がってゆく。
「先日も、ここで買ってやっみたのですが全然辛くならなかったんですが、ここのはどうしてこんなに辛みが出てるんですかね。」とたずねると、「父ちゃん」とおばさんが呼ぶ。
おやじさんが裏から出て来ながら
「いやー、少し干すんだわ、それからお湯に浸けるといいんだ。」
そこから始まりおじさんの「ワサビじまん独演会」が20分ほど続いた。お茶とワサビをいただきながら・・・・・・・・

独演会が終わってから1束のワサビを新聞紙にくるんでもらい店をあとにした。帰ったら言われたとうりに試してみよう。半信半疑ではあるのだが。
エンジンキーを回す。
「よし、今度は迷わず大芦川にまっすぐ行こう。」

私の通った小学校は田舎町の城跡に建ていた。木造の古いものであり、天守閣跡に立つと遠くに神社の椎木の森が見える。その深い緑が切れるあたりから瑠璃色をした瀬戸内の海が見えるそんな環境のところだった。

私が小学5年生の頃だったと思う。友だち2人とランドセルを背負い校門から続く坂道を下り通り道にでる。100メートルほど歩くと3人で田んぼの中の小さなあぜ道に曲る。その昔は城の回りを囲んでいたらしい堀跡の小さな川ぷちに出る。川ずたいにあぜ道を進み3人だけの秘密の場所にとたどりく。
まずランドセルをあぜ道に投だし裸足になって稲刈り跡の水涸れの田んぼに入っていく。
一歩踏み出すと冷たさが足から全身に伝わり鳥肌が立った。
それから3人3様で両手を一気に泥の中に両手を差し込み田の泥をすくいあげる。泥は、丁度発酵させたパン生地のような固さである。泥生地を伸ばすように地面になすり付けると中からドジョウが顔を出す。それを拾ってブリキのバケツにほうりこむ。
「あれ、」学校帰りなのに誰がバケツを持って来たのか?・・・・・
不思議に思ったがドジョウ取りに夢中で深く詮索する気もなかった。母親に叱られない様に一応は気を付けてはいるのだがズボンの裾、シャツの袖口は泥だらけだ。

日課の様なドジョウ取りを満喫し終わると、不思議なバケツをさげあぜ道を3人で帰って行く。
何を話したかは忘れてしまった。明日の真ぶな釣りのことだったかも知れない・・・・・・・

友だちと別れ私は、城跡から見える神社の隣の祖母の家へ行く。裏口から入り、吹き抜けの土間にある大きな石臼の所にゆき、上にかけてある板をソ−ッと横にずらすと金魚藻の中に小さなマブナが数匹泳いでいる。先週の日曜日に安国寺の池で釣ったものだ。
「よし、よし・・・・・」
なんとゆう理由はないのだが魚を見るだけで満足してしまう。
三分の一ほどずらした板の隙間からバケツのドジョウを石臼の中に流し入れる。真ぶなは一瞬にして砂荒らし状態になった水中で右往左往する。金魚藻も丸まってしまい大きな草餅のようだ。
そのまま覗いていると水は徐々に透明度がもどってくる。
あれ、ドジョウの姿が見えない。「おかしい。」
水面に頬ずりをするようにして透かして見るが、1匹もいない。
両手で金魚藻をすくいあげ確かめるが真ぶなだけで、やはりドジョウはいない。石臼の周りもはねているはずもなく。
何処へ・・・・・・・・・・

川の流れの音で目をさました。
「あぁー、夢か・・・」それで、なぜブリキのバケツが出て来たりどじょうが消えのか謎が解けた。夢か・・・

テントのジッパーを下げ外に出る。椅子に腰掛け半分は寝たままの状態でなにに使うというのではなく習慣でお湯を沸かす。
川面には霧がかかり餌釣りをする人が3人霞んで見える。その様子を観ながら水場に行き顔を洗う。

テーブルもどるとすでに湯が沸いている。とりあえずコーヒーを入れることに。

霧は少しずつ消えて行きだした。

朝食はトマトソースを作ろう。
こんなに早くできる料理は他にあるだろうか?
今日は、6分ほどで仕上げた。パンでトマトソースをすくって口に入れる。インスタントのコンソメスープも山の水で作ると一味ちがってくる。

朝食の間に釣り人が何人か登って行ったので予定を変更し、栃木の大芦川に行く事にする。テントをかたずけていると尾瀬の方から冷えた風が吹き下りてくる。少し汗をかいた体には気持ちがいい。

午前10時過ぎに、五十湖から日光、鹿沼とぬける予定で檜枝岐を出る。途中、鱒川まで来るとをちょっと覗いて観たくなった。道をそれ川の左側を上流に向かって林道を上がってゆく、ルアー釣り青年がいるが釣れているようには見えなかった。少し話したかったがすぐに上流に消えてしまった。やむなく車をUターンさせ352号へもどる。ついでに小鹿川にもひっかかって行こうか。
10年ほど前に友人4人で行ったたことがある。その内のひとりK氏が堰堤の下流でいいヤマメをかけ損ねたことを思い出しそこへ行って見ることにした。
記憶をたどりながらであったが30分ほどで着くことが出来た。
車を止め、川へおりて行くと川はうす緑色のトンネルになっている。
その中を風が通り抜け葉が触れあいサラサラと音をたてる。水の透明度は高い。
不用意に川岸に立つと小さなヤマメが上流へと走った。

私は以前この少し下流で形のいいイワナをかけたことを思い出す。対岸に大きな木が横たわり川底にはこぶし大の石が敷きつめられ、いかにも隠れ家には良さそうだった。記憶に残る釣りは、いくら時が流れてもスケッチしてあったように思い出せるようだ。その思いでの場所に下ろうかと思ったが、足は反対に上流にゆっくり踏み出されていた。あたりを見渡すとあの日と同じように 水際の荒く白い砂に「竜のヒゲ」(沿階草)が生えている。

「あれだ。」あの時、K氏がヤマメを2度かけ損ねたポイントが目に入ってくる。左右から木の枝が張り出し薄暗くその下に2つの大石が流れを止めるように居座、石と石の間をすり抜けるようにして流れが深場にさし込む。前よりいくぶん浅くなったようだがヤマメが住むには十分の水深はある。奥には日にさらされた堰堤も見える。
記憶はゆっくりと、完全にもどっていった。

私は、竿を取りに車にもどる。心の中を軽い緊張感が走る。
「あのワンポイントだけやろう。」
もし、あそこで出なければそれであきらめて大芦川に向かおう。

再び川にもどり毛バリを結びなおしリールから目測でラインを引き出す。真下からのキャスティングになる。
1度目はポイントの下流にキャストする・・・・・・・・
次はもう少し上に・・・・・・・
そうしてポイントの少し上に。

「出た!」いいヤマメだ。

「あああっ、・・・はずれた」

がっかりしながらラインを手繰り寄せてみるとバレた訳ではなく。チペットとリーダーの結び目が切れていた。何ともはや一番くやしく、悲しい結末になってしまった。
「・・・・・・・・・・・・」

ラインをリールに巻取り竿を二ッにたたみ下流の車にもどる。エンジンをかけ走り出すが一人の沈黙が続き325号線に出るころにため息を一つ。

この近くに時々立ち寄るワサビ屋がある。気分転換に寄ってみよう。店の老夫婦と地元の人が茶のみ話しをしているとこだった。
「こんにちは、ワサビの葉ありますか?]
「終わりですか?」
いつもは、店先の大きな木槽にいっぱい入れてあるのだが、今日は、水もワサビも入っていないので聞いてみた。
「あるよ。裏にいくらでもあるよ。」
おやじさんの方が裏に行きながら答えた。

おばさんの方はお茶を入れ小皿に切ったワサビを出してくれた。添えられてあった爪楊枝でワサビを口に運ぶと天然の辛みが広がってゆく。
「先日も、ここで買ってやっみたのですが全然辛くならなかったんですが、ここのはどうしてこんなに辛みが出てるんですかね。」とたずねると、「父ちゃん」とおばさんが呼ぶ。
おやじさんが裏から出て来ながら
「いやー、少し干すんだわ、それからお湯に浸けるといいんだ。」
そこから始まりおじさんの「ワサビじまん独演会」が20分ほど続いた。お茶とワサビをいただきながら・・・・・・・・

独演会が終わってから1束のワサビを新聞紙にくるんでもらい店をあとにした。帰ったら言われたとうりに試してみよう。半信半疑ではあるのだが。
エンジンキーを回す。
「よし、今度は迷わず大芦川にまっすぐ行こう。」


Copyright 2001 MOUNTAIN BROOK, All rights reserved.